◇内容証明Q&A

 

お金を借りた場合、弁済期になれば当然、借主は貸主に借りた金を返さなくてはなりませんが、人間の金銭への執着はよほど凄まじいのか、古今東西を問わず、貸金に関するトラブルは後を絶ちません。その事例を相談形式で挙げてみましょう。

 

 

 

相談① 貸金の弁済期を決めずにお金を貸してしまった

 

 

 

Q.弁済期を決めずに他人にお金を貸してしまいました。返済の催促をしたいのですがその場合、請求はいつすればいいの?

 

 

 

A.お金を貸す場合、弁済期を定めておくのが普通ですが、親しい間柄などの場合、弁済期を決めずに貸してしまうことがあります。その場合、貸主はいつでも返済を請求できると解されています。

 

 

しかしそれでは、借りた側はいつでも返済できるよう予めお金を用意しておかなくてはなりませんから、お金を借りた意味自体がなくなってしまいますね。

 

そこで民法では、弁済期を定めずに金を貸した場合は、貸主は「相当の期間を定めて返還の催告をすることができる(591条)」と定めています。問題はその「相当の期間」がどれくらいか、ということですが、猶予期間は10日間ぐらいがいいでしょう。内容証明で出す場合は、「本書面到達後10日以内にお支払い下さい」といった使い方をします。

 

 

 

相談② 保証人を付けてもらったのだが

 

 

Q.お金を貸した相手に保証人を付けてもらったのはいいのですが、本当に保証の承諾を得ているのかどうか、また、一度も会ったこともない人なので信用できる人なのかどうか不安なのですが。

 

 

A.こうした場合、その保証人に対して、保証意思を確認する内容証明を送ってみるのも有効な方法です。その内容は、「この度は○○氏の保証人となって頂きありがとうございます。保証内容につきまして、もし何か事実とそわない点がございましたらご一報頂けますか」とでもしておけば、覚えがある者はそのままにしておくでしょうし、まったく身に覚えがない者なら大慌てで連絡してくるでしょう。

 

 

 

相談③ 保証人に返済請求したのだが

 

 

 

Q.内容証明を使って借主の保証人に返還請求したのですが、保証人から「まずは、本人(借主)に請求してくれ」と言われ、埒が明きません。どうすればいいでしょうか。

 

 

A.保証人には「通常保証人」と「連帯保証人」とがあります。通常保証人は借主が借金を返済できなくなったときにだけ支払いの義務が生じますが、連帯保証人には「先に本人に請求してくれ」という権利(催告の抗弁権)も、「本人の資力(財力)を調べてくれ」という権利(検索の抗弁権)もありません。貸した本人に直接返還請求するも、連帯保証人に返還請求するも、それは貸主が自由に決められます。

 

 

 

従いまして、保証人に内容証明で返済請求する場合には、その保証人がどのタイプの保証人かをまずは知る必要があります。それによって保証人に送る内容証明の文言の内容も当然変わってくるからです。

 

 

 

【その他のケースにおける内容証明】

 

 

 

相談① 製造物責任法(PL法)における内容証明

 

 

 

Q.買ったばかりの子供用自転車のブレーキに欠陥があり、子供が大けがを負いました。損害賠償の件でメーカーに電話すると「当社の製品に欠陥があったことは認めるし損害賠償の用意もある。しかしあなたが損害賠償を求めるなら、われわれに故意または過失があったことをあなた自身が証明する必要がある」と言われました。いったいどうすればいいでしょうか。

 

 

 

A.かなり悪質なメーカーです。うんと懲らしめてやりましょう。確かに民法上は、被害者が加害者に損害賠償を求めるには、その損害が加害者の故意または過失によるものであることを被害者が証明しなくてはならないと解されてはいますが、それでは余りにも被害者に酷だということで製造物責任法(PL法 平成7年施行)が整備されました。

 

 

製造物責任法では、消費者(被害者)はメーカー側の故意や過失を証明できなくても製品の「欠陥」自体が証明できればそのメーカーに損害賠償請求することができると規定しました。

 

 

そこで「欠陥」とは何をいうか、ということになるのですが、同法によると、欠陥とは「製造物が通常有すべき安全性を欠いている」ということになっており、新車の自転車のブレーキが利かないのであれば、それは製造物責任法でいう「欠陥」に他なりません。

 

 

従いまして、被害者はその点をズバリついた損害賠償請求を内容証明で出せばよいことになります。

 

 

相談② 交通事故の示談後に後遺症が出た

 

 

Q.交通事故の加害者といったんは示談したのですが、示談成立後に重い後遺症が出てしましました。加害者に追加で損害賠償請求すると、「示談が成立したのだからもうすべて終わったことだ」といわれ、まったく取り合ってもらえません。何か良い知恵はないでしょうか。

 

 

A.原則としては、いったん示談が成立すると示談をやり直すことはできません。裁判に頼らず加害者と被害者が良く話し合い、お互いこれ以上の要求をするのはやめようと約束するのが示談の骨子ですから、もしこれが破られてしまうなら示談の意味自体が崩壊してしまうからです。

 

 

 

しかし何事にも例外はつきもので、示談書作成時には顕在化してなかった想定外の「後遺症」が示談成立後に出てきた場合などがそれです。医師の診断書をとったうえで、加害者に損害賠償請求を内容証明にして出しましょう。但し医師の診断書を内容証明郵便に同封することはできません。診断書は証拠書類として大事に保管しておきましょう。

 

 

 

相談③ 父が遺言で宗教団体に遺産をすべて寄付した

 

 

Q.父が遺言で、帰依する宗教団体にすべての遺産を寄付すると書き残して先日他界しました。確か一定の近親者には遺留分減殺請求権があると聞いているのですが、いったいどうやってその権利を行使すればいいのでしょうか。

 

 

A.相続法(民法)によれば、何ぴとも自分の財産を自由に処分(贈与)することができますし、また自分の死後の財産の行方を遺言によって決定できるとしています。しかし、その場合でも、一定の近親者には被相続人の意思に反しても保護されるべき権利として遺留分というものがあり、被相続人の配偶者、子、父母、祖父母などにこの遺留分が認められています(但し、遺言者の兄弟姉妹には遺留分はありません)。

 

 

この事例では、これらの近親者は、亡父が遺言で遺産を贈与した宗教団体に対し、亡父の遺産の2分の1の範囲で遺留分減殺請求をすることができます。この権利は、遺留分が侵害されたことを知ったときから1年、または、相続開始から10年経つと時効消滅しますから注意しましょう。

 

 

遺留分減殺請求は配達証明付き内容証明郵便でするのがもっとも確実です。 

 

 

 

◇監督官公署に提出する苦情申立書の作成

 

 

○クーリングオフや代金返還請求などの内容証明に業者が応じない場合は、特定商取引法に基づく苦情申立制度を活用し、悪質業者を直接監督官公署に申告して営業停止処分や、営業許可取消処分などの行政処分を書面にて求めるのも、行政書士の職権です。